大阪市民も都構想反対派も、既に橋下徹に嵌められている

f:id:sakamotoakirax:20150512004550j:plain大阪都構想の是非を問う住民投票が、5月17日に迫っている。
現在、大阪の有権者達のアンケートでは、都構想反対が39%、賛成が38%である。

大阪都構想、賛否割れる 新聞各紙が世論調査 : J-CASTニュース

しかし、中には反対が過半数に近づいているアンケート調査結果もある。

大阪都構想「反対」47%「賛成」36% 上西議員問題が影響か | どうしんウェブ/電子版(政治)

二つのデータを取り上げたのは、住民投票の結果予測の不透明さを示すためである。特に北海道新聞の方が問題で、上西衆議院議員の除名など、都構想に関係ないだろうと思ってしまう。しかし裏を返せば、大阪市民が大阪の将来を賭けてではなく、未だに気分で住民投票に臨んでいることを、この記事は示している。
都構想は橋下維新の要であり、都構想が失敗すれば、維新の党の存在意義が危うくなり、橋下氏は政治家引退に追い込まれかねない。いや事実、「都構想が否決されれば引退」と、橋下氏が述べているのである。つまり都構想の住民投票は、そのまま橋下氏の信任投票になるのであり、橋下氏を信任することが、大阪市民が都構想に身を委ねることになる。そのような構図が、都構想の住民投票の動きから見えてくる。この構図が、住民投票の行方を不透明にしているのであり、場合によっては大阪都が成立するのではないかと思わせるのである。

繰り返すが、この記事では橋下氏の構造改革を批判しない。この記事で取り上げるのは、橋下氏が間違っていても、橋下氏を止めるのは難しいことである。

大阪都構想には、相当厳しい批判があるが、ネットで見る限り、秀逸な批判は自民党大阪府支部連合会の『本気で考えよう!大阪の将来 大阪都構想不都合な真実』だろう。

自民党 大阪府連 | 本気で考えよう!大阪の将来 大阪都構想の不都合な真実

大阪都構想不都合な真実』の都構想批判の内容は多岐に渡るが、中でも重要なのは、都構想の経費削減効果の危うさを指摘していることである。

大阪都が実現すれば、4000億円の財源を生み出せるというのが橋下市長と松井知事の主張でした。
しかし、先頃、都構想による効果額が発表されましたが、773億~1000億円程に減少しています。
しかも、その773億円の内訳には、都構想の効果額に関係のない試算も含まれています。
例えば、試案1で示されている効果額773億円には、地下鉄の民営化やバス、水道、ゴミなどで743億円を捻出するとしていますが、これらはすべて都にしなくても、現在の大阪市が努力することで実現できることです。
そして、純粋に大阪都にして捻出できる効果額というのは、30億円程度と試算されており、773億円の効果額すらも、水増しされたものなのです」

と『大阪都構想不都合な真実』は述べている。

この指摘についての、大阪維新側からの反論もある。

大阪都構想 大阪都構想について|都構想のQ&A

しかしまずは、経費削減額の水増し、危うさ以外の回答を見てみよう。例えば「都構想によって、住民サービスは低下するのか」という質問について、

「敬老パスの有料化やスポーツセンター・プールの統廃合については、現在も、市政改革プランに基づき、取り組まれています。
敬老パスは持続可能な制度として維持するため、プール等の施設は利用実態等をふまえて適正配置するもので、いずれも最適な住民サービスを提供するために必要な改革です。
また、住吉市民病院については、近接する府立急性期・総合医療センターに「府市共同住吉母子医療センター(仮称)」を整備して、市南部に不足する小児・周産期医療の充実を図るものです。併せて、住吉市民病院跡地には民間病院誘致を進めており、住民サービスが低下するとの批判は的外れです」

と回答しているが、後半の住吉市民病院に件は統廃合の話であり、「市南部に不足する小児・周産期医療の充実を図るもの」としても、この案件ではそうかもしれないが、住民サービスの低下に繋がる公共施設の統廃合も行われるかもしれない。住民サービスの低下が的外れとするのはいささか乱暴である。
また「まちづくり等、大事な権限が大阪都に奪われるの?それで中核市並みの自治体と言えるの?」という質問に対しては
「地域レベルでの市街地開発などの権限は特別区が担うこととされており、地域のまちづくり特別区の判断で実施できます。
都市計画の用途地域の権限など、一部を取り出して、中核市並みの自治体でないかのような指摘は、全くの事実誤認です」
と答えている。
しかし「全くの事実誤認」というが、都市計画の用途地域の権限は都に移っているのであり、既に中核都市並の権限は、特別区にはない。「全くの事実誤認」という強弁は、相当大きな権限が大阪市から奪われるのをごまかしているように聞こえる。
それでは、都構想の経費削減効果についての批判に対する、大阪維新の回答を見てみよう。

「都構想は、大阪市大阪府のこれまでの業務の適正化を図り、広域行政は大阪都、基礎自治業務は特別区が行うだけでなく、民間で行えることは民間で行うという意味も含まれています。ですので、大阪都が実現すれば、民営化となり、地下鉄民営化等の効果が含まれることは当然のことです」

これが維新側の回答である。これは二重行政の解消をメインとした都構想の核の部分が、直接的な経費削減効果がほとんどないことを認めてしまった発言である。
大阪都構想不都合な真実』は、「大阪都構想は、政策と呼ばれるにはあまりにも無計画」と述べ、また「大阪市大阪府のままでも、職員の新規雇用を抑えることで、職員数の自然減が進んでおりますし、府市で重複する部分についても、府と市が連携し、協議することで改善されつつあります。
例えば、ゴミ収集などの経費の問題についても、民間に委託することでコストを下げることに成功しております。
これらはすべて、現行制度のもとで行われていることであり、「都」という枠組みを必要とするものではありません」とも言っている。

世の中には、ハリボテだけが大きくて、ハリボテを剥がすと中身がほとんどない人がよくいる。
そのような人は、最初は注目されても、ハリボテが剥がれると周りに相手にされなくなり、さらに時が経つと、ほとんど思い出されることもなくなる。
私から言わせれば、そのような人はただのアホである。
そして橋下氏を批判する人の多くは、言葉にしなくても、橋下氏をアホ同然と見ているように、私には聞こえる。
しかし橋下氏は、本当にアホなのか?これはつまらない問いではない。重要な問いである。

私が橋下氏なら、経費削減効果が全体の50分の1もない二重行政の解消を、メインにもってきたりはしない。
都構想批判者は橋下氏が二重行政の解消の効果が50分の1もないのを、橋下氏がわからなかったかのように語っている。
しかし他の部分では、強引な回答の目立つ維新、橋下氏が、「地下鉄民営化等の効果が含まれることは当然のことです」と、相手の主張をまるまる認めてしまう発言をしている。これは都構想批判者が、二重行政解消の効果がないことを指摘してくるのを、最初から織り込んでいるからではないか?

読者諸氏には、ここで気づいて欲しい。この議論は何かがおかしい。
橋下氏がおかしいというのではない。橋下氏は大なり小なり、いつもおかしいのである。
おかしいのは、大阪自民党の方である。
「職員の新規雇用を抑えることで、職員数の自然減が進んでいる」など、なぜ都構想批判者が、構造改革の話をしているのか?都構想批判とは構造改革批判ではないのか?
二重行政解消には中身はない。スカスカである。ならば都構想でない構造改革を進めれば、都構想とほとんど同じ結果が出るのではないか?

確信はないのだが、私は橋下氏の策が効を奏しているのではないかと思っている。
どういうことかというと、橋下氏にとって、二重行政の解消はメインでは決してなく、市営地下鉄民営化等を含めた、構造改革が本当のメインだったのではないかということである。
そして大阪自民が構造改革の話をしているのは、橋下氏が昨年、出直し選挙をして、さらに「都構想が否決されれば引退」と名言し、都構想可決=橋下信任の構図を作り出したため、大阪自民の目的も、都構想否決から橋下不信任に変わっていったのではないだろうか。
しかしここまで大阪自民が構造改革の話をしてしまうと、「どっちも変わらない」という印象を与えかねない。

私が、橋下氏の策略に大阪自民が嵌まったという考えに確信が持てないのは、そこまで徹底して有権者を欺く戦略を立てる人物の類型をさすがに知らないからである。しかしそのような人物が、既に日本の政界の表舞台に立っているならば、確信がなくとも語らないわけにはいかない。これでは詐欺師と言われても仕方がない。

しかしまた、橋下氏を詐欺師として、口を極めて非難する気にも私はなれないのである。なぜなら並の詐欺師は、相手の望まない嘘で人を騙そうとするが、優れた詐欺師は、人の最も望む嘘を提供するものだからである。

住民投票の予想だが、これも確信が持てないのだが、都構想は可決されるのではないかと思っている。
アンケート調査では、賛否が拮抗している調査結果もあるが、今のところ、賛成が反対を上回った調査結果はない。
しかし、これまでの調査結果は、投票忌避の可能性が反映されていない。投票忌避の可能性が調査結果に出てこないのも当然で、大阪の運命を決める都構想に、「無関心」とは言えないからである。

橋下氏のツイッターを見ると、「住民サービスは下がりません」がしきりに連呼されている。

橋下徹 (@t_ishin) on Twitter

これを大阪市民は信じているのだろうか?
大阪市民は信じているのではなく、飼い慣らされたのではないかと、私は思っている。
「不要」と言われ、過去最低の投票率だった出直し選挙、強引な答弁、前言撤回、執拗なツイッター攻撃、「討論しましょう」としきりに政敵に呼び掛ける橋下氏の言動には、独裁と民主主義が不思議に同居している。橋下氏の討論を、政敵は嫌って付き合わない。放置するのが賢明と、出直し選挙にも対立候補を立てなかった。
その結果がこれである。市民は橋下氏に消耗しているが、橋下氏から離れることができない。なぜか?誰も本気で、橋下氏と戦ってくれないからである。
よく、「橋下支持者は、改革に邁進する橋下氏をカッコいいと思っている」と言う人がいるが、二、三年前はともかく、この考えは今や間違いである。橋下支持者は消耗しながらも、橋下氏についていく以外に、選択肢がないと思っているのである。

橋下氏の政敵が、橋下氏と討論をしない理由もわかっている。構造改革に反対するには、財源を提示しなければならない。財源を提示したくないから、橋下氏にいいようにやられてしまったのである。
財源=増税かと言えば、これは私にはわからない。しかし橋下氏反対派は、そのプランを提示できない。
いや、提示している人もいるだろうが、そのプランが、都構想反対とうまく噛み合わない。なぜなら公共サービスの財源確保は最終的に国政の話だが、、都構想は地方行政は話だからである。
私は橋下氏の構造改革を止めるには、増税論が不可欠だと思っているが、増税以外で構造改革に反対するなら、橋下氏が国政に打って出るのを待った方がいいと思う。都構想で噛みついても、橋下氏は止めにくい。たとえ都構想がスカスカだとしてもである。噛みつくだけ損をする。


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平和憲法のために竹島を失った!?戦後の終わり~「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」より

最近、「戦後」という言葉は本当に使われなくなったようである。そして「戦後」という言葉が使われなくなったことによって、歴史的な意味で「戦後」は終わり、新しい歴史区分に入ったように思われる。
それでは「戦後」とは何だったのか?私は「戦後」とは平和憲法が絶対だった時代だと思っている。平和憲法に反対すると、エモーショナルな反発が返ってきてたちまち意見が封殺される。そのエモーショナルさが「大きな物語」となって、日本人に歴史的な一貫性を持たせ、国としての統一性になっていた。その日本の在り方に、我々は安住できたのである。
日本人は今でもエモーショナルである。しかしそのエモーショナルさが、全体を支配しなくなった。憲法問題も領土問題も、国民の意見が一致することはない。多くの人の反感を買う問題発言をする者がいた場合、「戦後」ならその者は必ず立場を失ったが、「戦後」でない現代ではその者は立場を失うとは限らず、理解を示す者や、称賛する者が現れることもある。「戦後」を終わらせた要因はいくつかあると思うが、やはりネットの力は大きいだろう。発言者の顔が見えないネット社会を批判する声も多いが、「戦後」を終わらせる意味では、周りに影響されずに言いたい意見を言える環境も必要だったということだろう。
「戦後」が終わった、今の時代の問題は国民的合意がほとんど形成されないことである。憲法問題でも靖国問題でも、国民の意見が一致しないのはもちろん、国の方向性を決められる政治家も不在である。政治家に決断力がないというのではない。どの政治家が方向性を示しても、その方向に社会が動いていかないのである。最近の安倍政権の動きは、良くも悪くも一つの方向性を示しているが、安倍政権の示す方向に世論が一本化する可能性は少ないだろう。
なぜ、国を一つの方向に向けて動かせないのか?一つだけ例を挙げれば、竹島平和憲法のために韓国に奪われたことを、誰も指摘しないことだろう。1952年9月28日、サンフランシスコ講和条約が締結され、日本は占領から解放された。韓国が李承晩ラインを宣言し、竹島領有を宣言したのは、1952年の1月18日である。本当に竹島を奪われたくなければ、独立した時点で、日本は韓国と戦争するべきだった。しかし独立直後に戦争不可能と言う人もいるだろう。ならば1965年の日韓基本条約が締結された後、「領土問題は解決済み」と韓国が主張した時点で戦争をするべきだろう。
「冷戦中に西側陣営同士で争うことはできない」などの反論は、言い訳でしかない。それどころか韓国の主張に対し、日韓基本条約破棄で対応しないなど、噴飯物である。
竹島を返せ」という日本人の主張を、私は本気で取り返す気があるとさえ思わない。日本人は竹島という領土問題があることさえ、多くの人が知らない時期があった。私も学校で、竹島問題を覚えた記憶がない。学校が教えなかったとは言わない。教える内容が少なすぎたのである。一方、北方領土のことは知っていた。ロシアは旧ソ連の時代から、領土交渉に臨む用意があったからである。
竹島を知らない、充分に教えないのは、平和憲法の国に、戦争につながる領土問題があってはならないということだろう。それなのに、与党は改憲どころか、憲法解釈の変更で済まそうとしている。竹島憲法の関係もろくに論じない国で、竹島返還要求など無用であり、我々に必要なのは、なぜ竹島を失ったのかを考えることである。
日本の議論は過激に見えるものでも詰めが甘く、時として対立関係が議論を煮詰めないで済ます、共犯関係にさえなっている。日本の方向性は、どれだけ突っ込んだ議論ができるかにかかっているだろう。

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